MOTU M2 レビュー|PCの音をちょっと良くしたい人へ。6年使って分かったオーディオインターフェースの実力

先に結論
- MOTU M2を6年使って分かった良い点・気になる点
- Macのヘッドホン端子と比べて音は良くなるのか
- 差が出やすい条件(鳴らしにくいヘッドホン・スピーカー)
- 楽器を弾く人の使い方(ベース・ギター)
Macの音をちょっと良くしたい人、K701のような鳴らしにくいヘッドホンを使っている人、デスクにモニタースピーカーを置きたい人、いずれ楽器やマイクもつなぎたい人におすすめです。
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私のデスクには6年前に買ったオーディオインターフェースのMOTU M2が置いてあります。もともとはベースやギターの練習のために買ったものですが、今ではMacで音楽を聴くときやYouTubeを見るときにもこの箱を通して聴いています。
この記事は楽器を弾く人はもちろん、「曲作りはしないけれど、Macの音をちょっと良くしたい」という人に向けて書いています。ヘッドホンやスピーカーにこだわりがあるなら、M2は6年経った今でも勧められる一台です。ただし、普通のイヤホンをMacに挿して不満がない人には劇的な変化はないかもしれません。そのあたりも含めて買った経緯から良い点・気になる点まで順に書いていきます。
MOTU M2(2in/2out USB-C オーディオインターフェース)
MOTU M2とは
MOTUはアメリカの老舗の音響機器メーカーで、プロのスタジオ向けの機材で知られています。そのMOTUが入門機として出したのがM2で、日本では2019年11月26日に発売されました。発売の情報が出た時には、オーディオやDTM界隈の方々が「ヤバいのが出る」と騒いでいた記憶があります。
オーディオインターフェースというと難しく聞こえますが、やっていることは単純です。Macとヘッドホン・スピーカー・楽器のあいだに挟む箱で、Macのデジタルの音をヘッドホンやスピーカーで鳴らせる音に変える役目と、その逆(楽器やマイクの音をMacに取り込む)を受け持ちます。前者の役目だけに絞った製品は「USB DAC」と呼ばれます。
M2は高級オーディオ機器にも使われるESSの変換チップ(Sabre32 Ultra DAC)を積んでいるのが売りです。Macとの接続はUSBケーブル1本で、電源もそこから取るのでコンセントは要りません。
なぜMOTU M2を買ったのか
M2を買う前は、FenderのBass Boyというミニアンプにヘッドホンを挿してベースの練習をしていました。初めてベースを買った時に一緒に買ったやつです。困っていたのは曲を流しながら一緒に弾くのが難しいことです。一応有線で接続はできるんですが、iPhoneにイヤホンジャックがなくなってしまい、困った状態になってしまいました。
そんな折、ベーシスト仲間がみんなオーディオインターフェースを使っていると聞きました。Macの音と楽器の音を1台で混ぜてヘッドホンに送れるなら悩みはそのまま解決します。それでとりあえずオーディオインターフェースを買うことにしました。
ちょうどそのころ、MOTUという名門が入門機を出すらしいという話が耳に入りました。前述の通り、DTM・オーディオ界隈でゲームチェンジャーであるとしてかなり話題になっており、これには素直に飛びつきました。買ったのは発売から間もない2020年で、爆発的な人気だったため品薄が続いていたので手に入れるのに少し苦労しました。
Steinbergと迷って、見た目で決めた
対抗馬は仲間の多くが使っていたSteinbergのオーディオインターフェース(確かUR22)でした。比べて最後に決め手になったのは、正直に書くと話題性と見た目です。
- 大きな音量ノブ
- 金属の筐体(Steinberg側の素材は確かめていません)
- 見やすいレベルメーター
- 無駄に文字が大きくなく、多くないデザイン
音で選んだわけではないのかと思われそうですが、毎日デスクで目に入って手で触る道具ですから、見た目がいいのがいいに決まっています(初めてのオーディオインターフェースだったので知識がなかったというのももちろんあります)。なお、私はM2以外のオーディオインターフェースやUSB DACを使ったことがありません。この記事に他の機種との聴き比べが出てこないのはそのためです。
普段使いで、Macの音は本当に良くなるのか
ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。
私はデスクでAKGの開放型ヘッドホンK701を使っています。このK701をMacのヘッドホン端子に直接挿したときとM2を通したときでは、M2のほうが音が良く聞こえます。ただ、自分の耳がおかしいのか高い機材を通しているという思い込み(プラシーボ)なのか、自信がありませんでした。そこで一般論としてどうなのかを調べてみました。
最近のMacのヘッドホン端子は、実はかなり優秀
まず前提として、最近のMacのヘッドホン端子は侮れません。Appleの公式の説明では、2022年以降のMacBook Airや2023年以降のMac miniなどはつないだヘッドホンに合わせて出力を自動で切り替える仕組みを持っています。内蔵の変換回路も最大96kHzに対応しています。
一般に、まともな機器同士の変換チップの差は小さいと言われます。音量をぴったり揃えて目隠しで聴き比べると聞き分けるのは難しいという話も多く見かけます。
それでも差が出やすいのは、鳴らしにくいヘッドホン
一方で、K701は「鳴らしにくい」ヘッドホンとして有名らしい。これはカタログの数字でも確かめられます。AKG公式の感度は105dB(1Vあたり)で、スタジオ定番のソニー MDR-CD900STを同じ基準に直すと約118dB。同じ音量を出すのに、K701は約4.5倍の電圧を必要とする計算です。
そしてMacは、抵抗値が150Ω未満のヘッドホンには出力の弱いほうのモード(最大1.25V)で鳴らします。K701は62Ωなので、こちらのモードです。計算上はそれでも十分な音量が出るので「Macでは鳴らない」わけではありません。ただ、Mac側の音量をかなり上げて余裕の少ない状態で鳴らすことになります。M2で鳴らすと、音量には十分すぎるほど余裕があります。
つまり、私がM2のほうを良く感じる理由として筋は通っていそうです。ただし、騒音計で音量を揃えて聴き比べたわけではありません。人は少しでも大きい音を「良い音」と感じやすいので、プラシーボの可能性は否定しきれないというのが正直なところです。
普通のイヤホンを最近のMacに挿している人ならM2を足しても劇的には変わらないかもしれません。差が出やすいのは、K701のような鳴らしにくいヘッドホンを使う場合やスピーカーをつなぎたい場合だと思います。
スピーカーもつなげる
M2の背面にはモニタースピーカー用の出力があり、私はIK Multimediaの小型モニタースピーカーiLoud Micro Monitorをつないでいます。ヘッドホンとスピーカーを1台で切り盛りできるのはデスクで音楽を聴くときには便利です。iLoud Micro Monitorは小型ながらめちゃくちゃ優秀なスピーカーなので、また別の記事で書くつもりです。
6年使って良かった点
1. 音量をノブで直感的に変えられる(しかも2つ)
音量をキーボードではなくノブを回して変えられるのは直感的でありがたいところです。たとえば動画の音が急に大きくなっても手を伸ばせばすぐ絞れます。
しかもノブはモニタースピーカー用とヘッドホン用で別々に付いているのがなお良いところです。スピーカーとヘッドホンの音量をそれぞれ別の位置にしておけます。
2. ノブの手応えがちょうどいい
大きな音量ノブは回したときの重さが適度にあります。トルクがしっかりしている、というのでしょうか。毎日触る部分なので、この手応えは満足度につながっています。
3. メーターが見やすく、ゲインを合わせやすい
入力と出力の音の大きさがカラーのメーターで表示されます。見やすいので楽器をつなぐときの入力の大きさ(ゲイン)を合わせやすいのが助かっています。
4. 見た目が良い
見た目で選んだことは前述の通りです。大きなノブとカラーのメーターと金属の筐体の組み合わせは、デスクに置きっぱなしの道具としてポイントが高いところです。
5. 音がシンプルに良い
音がシンプルに良い、というのが素直な感想です。Macのヘッドホン端子との比べ方とその限界は前述の通りです。
6. 6年間、故障なし
ネットではM2の不具合の報告も見かけますが、私の個体は6年間故障していません。今でもまだまだ現役です。あくまで1台の話ですが、ひとつの材料にはなると思います。
気になる点
1. 音量の調整がMacとM2の二系統になる
良い点1の裏返しです。M2を通すと、Mac本体の音量とM2のノブの両方で音の大きさが決まるようになります。音が小さいときにどちらを上げればいいのか一瞬迷うことがあります。
とはいえ、言うほどのマイナスではありませんし致命的でもありません。慣れるまでにワンクッション要る、くらいの話です。
2. ループバックの設定がややこしい
M2にはMacで流している音とマイクの音を混ぜてMacに戻す「ループバック」という機能があります。配信や録画で使う機能ですが、この設定がややこしいです。私は配信をしないので困っていませんが、ループバックを使って配信をしたい人は設定で少し苦労するかもしれません。
楽器を弾く人へ(おまけ)
ここからはもともとの購入目的だったベースとギターの話です。
ベースは、M2に直接つないでいます。以前はRupert Neve DesignsのRNDI(DIと呼ばれる、楽器の信号をオーディオインターフェースやミキサーが受け取りやすい形に整える機材)をファンタム電源で動かして間に挟んでいましたが、引っ越しを機にデスクの上をすっきりさせたくて一時的に外しています。デスクシェルフを導入したら、いい感じに収納できるようになるのでRNDIを復帰させ、そこにベースやギターをつなぐつもりです。そちらのほうが音が良いですからね。
ギターは個人的にはアンプありきと思っているのでM2に直接つなぐことは基本的にありません。ただしFenderのAcoustasonicについては直で挿しても違和感がないので直で弾くことも多いです。エレキギターはたいていエフェクターを通して弾くので、Line 6のHX STOMP単体でアンプシミュレーターを使うか、TONEX(同じくアンプシミュレーター)を組み込んだエフェクターボードを経由してM2につなぐことが多いです。
曲を流しながら一緒に弾くというミニアンプ時代の悩みは、M2で解決しました。以前はもう1つの入力にコンデンサーマイクもつないでいましたが、使う機会がなさすぎてデスクで邪魔なので今は外しています。
ちなみに、M2はドッキングステーションのCalDigit TS5 Plus経由でMacにつないでいて、Macがスリープ中でもM2には電源が入ったままです。Macを起こさなくてもM2をアンプ代わりにして弾き始められます。このためにドックの口をどう割り振ったかは、CalDigit TS5 Plusの記事に書きました。MacとのケーブルはOYAIDEの緑のUSBケーブル(d+USB class B)を使っています。
どんな人に向くか
向いているのは次のような人だと思います。
- K701のような鳴らしにくいヘッドホンをMacで使っている人
- デスクにモニタースピーカーを置きたい人
- 音量をノブで直感的に変えたい人
- いずれ楽器やマイクもつなぐかもしれない人
逆に、向かないかもしれないのは次のような人です。
- 普通のイヤホンを最近のMacに挿していて、音に不満がない人(劇的には変わらないかもしれません)
- Macのキーボードだけで音量を完結させたい人
- ループバックを使った配信がメインの人(設定に慣れが要ります)
まとめ
MOTU M2は楽器の練習のために買ったオーディオインターフェースでした。6年経った今では、音楽やYouTubeを聴くときにも重宝するMacの音の出口になっています。
Macのヘッドホン端子は優秀なので、誰にとっても劇的に音が良くなるとは言えません。それでも、鳴らしにくいヘッドホンに余裕を持たせられること、スピーカーとヘッドホンの音量をノブで別々に扱えること、そして6年壊れず、毎日触る道具として気に入っている見た目と手応えがあること。この3つに価値を感じるなら、M2は今でも良い選択だと思います。
家の中を動きながら使うワイヤレスヘッドホンについては、Bose QuietComfort Ultra(第2世代)の記事に書いています。デスクのK701との使い分けにも触れています。
MOTU M2(2in/2out USB-C オーディオインターフェース)




